建築

二級建築士には受験資格がない?受験するために必要な学歴・実務経験とは?

2023年5月24日

二級建築士の受験資格は、令和2年の建築士法改正により実務経験の必要年数や対象業務、学科試験免除期間などが緩和されました。そこで今回は、二級建築士の受験資格や改正点、実務経験を積める就職先について解説します。学校で必要履修科目の単位を取得すれば、受検資格を実務経験なしで取得可能(一部の学校では実務経験が必要)、もしくは試験合格後に必要な実務経験を積めば免許登録が可能となることが分かります。

 


 

二級建築士には受験資格がない?

二級建築士には以下の受験資格があり、以下のいずれかを満たしている必要があります。

  • 建築に関する学歴または資格を保有
  • 7年以上の実務経験

 

建築に関する学歴または資格を保有

二級建築士の受験・免許登録時に必要な科目の単位数を取得すると、受験資格・免許登録資格を得ることができます。国土交通大臣の指定する建築に関する科目(指定科目)は、建築・デザイン・土木系の学科のみで履修可能です。ただし、学校種類別により、受験資格・免許登録資格は異なります。大学・短期大学・高等専門学校・職業能力開発総合大学校・職業能力開発大学校・職業能力開発短期大学校の場合における必要単位数、受験資格、免許登録資格を下表にまとめました。

分類 必要単位数
必要となる建築実務経験年数
① 建築設計製図 3単位
② 建築計画 2単位
③ 建築環境工学
④ 建築設備
⑤ 構造力学 3単位
⑥ 建築一般構造
⑦ 建築材料
⑧ 建築生産 1単位
⑨ 建築法規 1単位
①~⑨の計(a) 10単位
⑩ 複合・関連科目(b) 適宜
(a)+(b) 40単位 30単位 20単位
受験資格(必要となる建築実務の経験年数) 卒業後0年
免許登録資格(必要となる建築実務の経験年数) 卒業後0年 卒業後1年 卒業後2年

※参照元:「二級建築士・木造建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)」公益財団法人 建築技術教育普及センター

また、高等学校、専修学校、各種学校、職業訓練校における必要単位数と受験資格・免許登録資格に必要な実務経験年数については、公益財団法人建築技術教育普及センターWebサイトをご覧ください。

 

7年以上の実務経験

建築関連の学歴が無く、指定科目の単位を取得できない場合は、7年間の実務経験を積むことで二級建築士の受験資格を得ることができます。

 

二級建築士の受験資格が改正

令和2年(2020年)の建築士法改正により、二級建築士の受験資格が改正されました。改正内容は主に以下の通りです。

  • 受験時の実務経験が緩和
  • 免許登録要件に変わった
  • 実務経験の幅が広くなった
  • 学科試験の免除期間が長くなった

 

受験時の実務経験が緩和

建築士法改正前までは、二級建築士の受験資格として所定の実務経験年数が必要でしたが、令和2年からは実務経験が緩和されました。学校分類ごとの指定履修科目取得単位による受験資格に必要な実務経験年数を下表にまとめました。

学校分類 指定履修科目取得単位
40単位 30単位 20単位 15単位 10単位
大学、短期大学
高等専門学校
職業能力開発総合大学校
職業能力開発大学校
職業能力開発短期大学校
卒業後0年
高等学校 卒業後0年 卒業後1年
専修学校(高等学校卒業)
各種学校(高等学校卒業)
卒業後0年
専修学校(中学校卒業)
各種学校(中学校卒業)
卒業後1年 卒業後2年
職業訓練校(高等学校卒業) 修了後0年
職業訓練校(中学校卒業) 修了後0年 修了後1年 修了後2年

※参照元:「二級建築士・木造建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)」公益財団法人 建築技術教育普及センター

ただし、建築の学歴(指定履修科目の必要単位数)が無い場合の受験資格は、建築実務経験として7年を要しますので注意が必要です。

 

免許登録要件に変わった

二級建築士試験に合格後、免許登録申請すると、二級建築士の免許が交付され、二級建築士に許可された範囲内の業務が可能となります。ただし、受験者の学歴によって、試験合格後の免許登録に必要な実務経験年数が異なります。学校分類ごとの指定履修科目取得単位による免許登録に必要な実務経験年数を下表にまとめました。

学校分類 指定履修科目取得単位
40単位 30単位 20単位 15単位 10単位
大学、短期大学
高等専門学校
職業能力開発総合大学校
職業能力開発大学校
職業能力開発短期大学校
卒業後0年 卒業後1年 卒業後2年
高等学校 卒業後2年 卒業後3年
専修学校(高等学校卒業)
各種学校(高等学校卒業)
卒業後0年 卒業後1年 卒業後2年
専修学校(中学校卒業)
各種学校(中学校卒業)
卒業後3年 卒業後4年
職業訓練校(高等学校卒業) 修了後1年 修了後2年
職業訓練校(中学校卒業) 修了後2年 修了後3年 修了後4年

※参照元:「二級建築士・木造建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)」公益財団法人 建築技術教育普及センター

 

実務経験の幅が広くなった

実務経験として認定される業務対象が拡大しました。必要な実務経験は、下記の通りです。(令和2年3月1日以降の実務)

実務経験対象業務 業務内容事例
1 建築物の設計に関する実務
  • 設計与条件の整理、事業計画検討
  • 構造計算プログラムの開発、BIM部品の作成
  • 空調・換気設備、給排水設備などの設計 など
2 建築物の工事監理に関する実務
  • 工事監理者の立場の実務 など
3 建築工事の指導監督に関する実務
  • 住宅性能表示制度における性能評価業務
  • 独立行政法人住宅金融支援機構の適合証明業務
  • 住宅瑕疵担保責任保険に係る現場検査業務 など
4 建築士事務所の業務として行う建築物に関する調査又は評価に関する実務
  • 既存建築物の調査・検査
  • 調査結果を踏まえた劣化状況等の評価 など
5 工事の施工の技術上の管理に関する実務
  • とび・土工・コンクリート工事
  • タイル・れんが・ブロック工事
  • 鉄筋工事 など
6 建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査等に関する実務
  • 建築主事または指定検査機関の立場の業務 など
7 消防長又は消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する業務
  • 建築物の防火に関する違反有無の判断業務 など
8 建築行政に関する実務
  • 建築基準法に係る個々の建築物の審査・検査・指導・解釈・運用等に係る業務
  • 法律に基づき行う認定・三佐・判定業務
  • 建築物に係る技術的基準の策定業務 など

※参照元:「建築士資格に係る実務経験の対象実務の例示リスト」公益財団法人 建築技術教育普及センター

 

学科試験の免除期間が長くなった

建築士法改正前までは、二級建築士学科試験合格後、3年間の学科試験免除の有効期間が与えられており、その間で2回の学科試験が免除になるとされていました。建築士法改正後は、二級建築士学科試験合格後の学科試験免除の有効期限が5年に改正され、その間で4回の学科試験のうち2回の試験が免除されることになっています。なお、その分ゆとりをもって製図試験に臨めるようになりました。

 

二級建築士の実務経験を積める就職先

二級建築士の実務経験を積める就職先は、主に以下などです。

  • 設計事務所
  • ゼネコン
  • ハウスメーカー

 

設計事務所

設計事務所は、建築物の設計・工事監理を業務とするため、実務経験の中でも設計図・施工図などの図面に関する業務に携わる機会が多くなります。建築士の設計業務や工事監理業務の補助を行うことで、実務経験の対象となります。

 

ゼネコン

ゼネコンは、建築工事の元請業者となる機会が多く、様々な下請け業者と協力して工事を進捗させます。ゼネコンに入社すると、設計部門や建築工事部門などに配属され、設計業務や工事監理業務などに携わることにより、実務経験を積むことができます。

 

ハウスメーカー

ハウスメーカーは、戸建て住宅の商品開発・企画・設計・施工管理・メンテナンス・販売を業務とします。大手ハウスメーカーは部門が細かく分類されているため、設計部門や工事管理部門、積算部門などに配属されると、二級建築士の受験資格に必要な実務経験を積むことができます。

 

まとめ

二級建築士の受験資格や改正点、実務経験を積める就職先について解説しました。二級建築士の受験資格の緩和措置がなされ、受験者数の増加が見込まれます。しかし、試験の難易度が下がった訳ではないため、受験対策に必要な勉強は必要不可欠です。建設業界では需要の高い資格となりますので、二級建築士の資格取得を検討されている方はぜひ挑戦してみてください。

 


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